多様な薬と瓶

産婦人科で処方してもらえるピル。正式名称は経口避妊薬(経口剤)などと言われています。単純な避妊目的だけではなく、婦人科疾患の治療や月経過多などの緩和、生理周期の変更などにも用いられます。
かつては副作用も多く、あまり利用する人は少ないとされてきた経口剤ですが、この十数年間で新しい概念なども生まれ、女性に寄り添う医薬品として知られるようになりました。

服用することで避妊ができる仕組みが知りたいという方も増えています。また、経口剤の処方が当たり前になりすぎて基本がわからないという声も多々あることが分かっています。ここでは、経口剤が作用する仕組み、どのように選べば良いのかを解説しましょう。

ピルは毎日同じ時間に服用する

望まない妊娠や、婦人科疾患の緩和で処方されるのは低用量ピル(経口剤)と呼ばれるものです。経口剤は卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体化ホルモン(プロゲステロン/プロゲストーゲン)と呼ばれる2種類の女性固有のホルモンの合剤で、その商品によって黄体ホルモンの含有量が変わります。プロゲステロンとは、ステロイドホルモンの一種であり、黄体化ホルモン(プロゲストーゲン)の働きを持っています。
また低用量ですので、従来のものと比べて、配合される女性ホルモン製剤の量が少ないことでも知られています。

低用量の経口剤は2種類です。含まれるホルモン量が時期によらず一定の含有量であるもの【一相性】と、含まれるホルモン量が時期によって3段階に変化するもの【三相性】です。従来の経口剤の多くは一相性のが多く、女性サイクル(月経→卵胞→排卵→黄体)という時期による女性ホルモンの分泌に寄り添うものではありませんでした。そのために副作用を感じる人も多くみられた経緯があります。

三相性の場合は、28日1セットとなっており、7~9日程度の周期で女性ホルモン製剤の含有量を少しずつ変化させて服用することができるので、より女性の体のサイクルに寄り添ったものとなります。副作用も限りなく少なく生活が送れるメリットが生まれます。
もちろん、低用量でも効果は得られますし、リセット期は通常の生理と同様の出血がみられるため、普段と変わらない生活を送ることができるでしょう。

そもそも妊娠とは、精子が着床し、受精卵になることによって起きるもの。そのため、妊娠中は生理が止まるうえ、排卵などもストップしますので、精子を受け付けることや、受精卵の成立もできません。

経口剤はその疑似妊娠状態を継続させ、1週間程度の生理様の出血で新陳代謝を促し、また新たな疑似妊娠状態を継続させるというサイクルを作ります。疑似妊娠状態を継続させるにはホルモンの血中濃度を常時継続させることが必要ですが、ホルモンの含有量が少ない低用量の経口剤では、24時間程度の持続量の配合が精いっぱいだと考えるとよいでしょう。だからこそピルの飲み忘れに注意という注意喚起がなされているのです。
ルーチンワークの中に経口剤を飲むことを組み入れるためにも、毎日同じ時間に服用することが望ましいとされています。

ピルの服用を忘れた時の対処法

ピルの避妊効果は高いといわれていますが、それは飲み忘れることなく定期的に飲んでからこその効果となります。また、女性にはエストロゲンが必要とされており、経口剤でエストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで女性らしさや健康を保てるというメリットもあります。

経口剤を初めて処方してもらうときには、医師や看護師などからのカウンセリングを行うことが基本です。後述しますが、体質によっては処方する経口剤が合わない場合もありますし、ヘビースモーカーである・規則正しい生活ができない・自己管理ができないというような状況判断がなされたら経口剤の処方は見送ることもあります。飲み忘れてしまうと避妊の継続ができなくなりますし、重篤な副作用の可能性も否めないからです。

毎日規則正しい生活を続けている人でも、ついうっかり忙しくてというような理由から経口剤の服用を忘れることもあります。ここからはその対処法をまとめてまいります。経口剤は、毎日同じ時間帯に服用することがセオリーです。万一飲み忘れた場合はその時間が1~2時間以内であれば問題はありません。
服用忘れの時間が12時間以内であればその時点で飲み忘れの1錠を服用し、次の日からは毎日の服用時間と決めた同じ時間に服用するようにしましょう。

もし、1回服用忘れがあり12時間以上経過した場合は、飲み忘れの分とその日の服用分を追加服用します。あとは毎日決まった時間に服用するようにしましょう。ここまでの服用ルールを守れば、効果には何ら影響はありません。ただし、1回服用忘れのタイミングがあれば、その日から1週間は男性側にも避妊具の使用を促すことをお勧めします。

1日以上、2回の飲み忘れがあった場合はその時点で出血が始まる可能性があります。経口剤の血中濃度が薄まれば、無排卵月経と同様の出血がみられます。飲み忘れがあった場合は、医師の指示を仰ぐことが大切です。

その周期はそれでリセットとなりますので、飲みかけの経口剤は廃棄することが望ましいです。服用をいったん休み、出血一日目から新しい周期の経口剤を服用することになります。経口剤は1シート(1ヶ月分/28日分)2,500円~3,000円の費用が掛かります。飲み忘れが多いとそれだけ無駄になってしまいます。三相性の経口剤だとさらに無駄にしてしまうことがありますので、飲み忘れが多い場合は経口剤は避けるべきかもしれません。

ピルの主な副作用

まずは、経口剤を飲むことのメリットをまとめてまいります。
①ニキビの改善:経口剤に含まれている卵胞ホルモンの効果でニキビができにくい肌に代わります。②生理不順や生理痛の緩和:経口剤で一時的に女性サイクルを止めることで体の成熟を促す期間を作ることが可能です。生理の周期を安定化させるほか、生理前後に起こりやすい生理痛の緩和を促します。③貧血の改善:経口剤による出血は少量ですので、生理中に起こりやすい貧血の改善につながります。④周期のコントロール:経口剤の飲み始めや服用中止で月経周期をコントロール可能です。⑤100%の避妊効果:正しく服用することで100%の避妊効果があります。

このほか、婦人科疾患の治療や症状の緩和などのメリットも生まれます。経口剤と上手に付き合うことができれば、生理に振り回されない生活を送ることができるといったところもよいところでしょう。

よいことがある反面、経口剤には副作用も隠されています。低用量ピルの出現で副作用は少なくなったといわれますが、こういったリスクを承知したうえで薬が処方されます。

飲み始めのころに起こりやすい副作用として、吐き気や胸の張り、頭痛、不正出血というような症状が見られるでしょう。これは疑似妊娠状態を作り出した結果と言われ、妊娠初期と同様の症状です。服用開始後2~3ヶ月ほどでこれらの副作用は消失するとされています。どうしても、副作用がひどいという場合は、別の低用量ピルの処方を行う場合も。

経口剤の処方リスクとして、肝機能障害や高血圧、糖尿病の既往症を持つ人や、喫煙者には副作用のリスクが高くなることを説明しています。ピルの服用により女性サイクルに必要な女性ホルモンの分泌を止めることで、血栓症や心筋梗塞、脳卒中のリスクがわずかに高くなることが分かっているからです。カウンセリングを行った結果、1日に20本以上たばこを吸う人や、高血圧症・糖尿病などで投薬治療を行っている人に対しては経口避妊薬を処方しない病院もあるでしょう。

処方した病院では、定期的に血液検査を行い、ピルによる影響が体に出ていないか確認することもあります。また生活習慣病リスクが高くなり、閉経間もない40代を超えた女性には経口剤の処方ではなく、ほかの避妊方法の提案をする場合もあります。